ログ037「個人制作のビジュアルノベルとして、ボリュームを考える」

はじめに

焼魚あまねです。

前回のゲーム開発ログでは、制作中のビジュアルノベル『吸血天使のユニット戦線』について、シナリオの文章量や音声の再生時間をもとに、想定プレイ時間を計算してみました。

その結果、現時点では通常プレイでおおむね10〜12時間程度の作品になるのではないか、という見通しになりました。もちろん、実際に完成したゲームを通して測定したわけではありませんが、制作している僕自身にとっても、作品の規模を改めて認識するきっかけになりました。

そこで、ふと気になったことがあります。

個人制作のビジュアルノベルとして、10時間以上のプレイ時間がある作品は、どれくらいの規模なのでしょうか。

今回は、ほかのビジュアルノベル作品とも比較しながら、本作のボリュームや、個人制作としての規模について考えてみたいと思います。

まずは『吸血天使のユニット戦線』の規模を振り返る

改めて、現在制作している『吸血天使のユニット戦線』の規模を整理してみます。

項目現在の規模・想定
ジャンルビジュアルノベル
シナリオ50話以上
表示される文章量約23万字
キャラクターの会話量約14万6,000字
想定プレイ時間約10〜12時間
音声フルボイス化を予定
制作形態個人制作

本作は、キャラクター同士の会話や物語の展開を中心に楽しむ、長編のビジュアルノベルです。50話以上のシナリオを通じて物語が進んでいく構成となっており、登場人物も比較的多くなっています。

さらに、フルボイス化やオリジナル楽曲、ゲーム内の各種演出なども取り入れながら、作品全体の完成度を高めることを目指しています。

こうして整理してみると、単純な文章量だけでなく、音楽や演出なども含めて、かなり多くの要素を扱っていることが分かります。

ほかのビジュアルノベルと比較してみる

ビジュアルノベルのプレイ時間は、作品によって大きく異なります。数時間で読み終えられる比較的短い作品もあれば、数十時間をかけて物語を楽しむ長編作品もあります。

また、同じ作品でも文章を読む速度や音声の聴き方によって所要時間が変わるため、単純に比較することは難しいところです。

それを踏まえたうえで、参考になりそうな作品をいくつか見てみます。

『ドキドキ文芸部!』の場合

まず、個人・小規模制作のビジュアルノベルとして知られている作品に『ドキドキ文芸部!』(Doki Doki Literature Club!)があります。

Team Salvatoが制作した作品で、一般的な恋愛ビジュアルノベルを思わせる外見を持ちながら、独特の演出や物語構成によって知られる作品です。

プレイ時間については、ゲームの所要時間を集計しているサイトなどで、メインストーリーが約4時間程度とされています。

もちろん、作品の内容や構成が異なるため、プレイ時間だけで比較することはできません。それでも、本作の想定プレイ時間である10〜12時間と比べると、文章を読み進める時間という意味では、『吸血天使のユニット戦線』の方が長くなる見込みです。

一方で、『ドキドキ文芸部!』のように、比較的コンパクトなプレイ時間の中で印象に残る体験を提供している作品もあることを考えると、必ずしも長さが作品の魅力を決めるわけではないと感じます。

『ATRI -My Dear Moments-』の場合

続いて、比較的まとまった長さのビジュアルノベルとして、『ATRI -My Dear Moments-』を見てみます。

こちらはANIPLEX.EXEの作品で、魅力的なキャラクターや物語を中心としたビジュアルノベルです。

プレイ時間には個人差がありますが、Steam上のプレイヤー報告などでは、おおむね10時間前後から十数時間程度という例が見られます。

もちろん、Steamに表示されるプレイ時間には、文章を読んでいる時間以外も含まれる可能性があるため、厳密な比較には向きません。

ただ、こうした作品と比べてみると、10〜12時間という想定プレイ時間は、商業作品の中でも比較的まとまった長さを持つビジュアルノベルと、ある程度近い規模になる可能性があります。

もっとも、商業作品ではシナリオだけでなく、グラフィックや音楽、演出、操作性など、さまざまな要素に制作リソースが投入されています。

そのため、プレイ時間が近いからといって、作品全体の規模や完成度まで同じだというわけではありません。

プレイ時間だけで大作かどうかは判断できない

ここまでほかの作品と比較してみましたが、改めて考えると、プレイ時間だけを基準に作品の規模を判断することには限界があります。

例えば、同じ10時間のゲームでも、ほとんどが文章を読む時間で構成されている作品と、探索や戦闘、パズルなどの要素を含む作品では、制作に必要な作業が大きく異なります。

ビジュアルノベル同士であっても、背景や立ち絵の数、イベントCGの量、音声の有無、システムの複雑さなどによって、制作規模は変わってきます。

また、シナリオの文章量についても同様です。文章が長ければ、それだけで面白くなるわけではありませんし、短い作品だからといって内容が薄いということもありません。

大切なのは、その作品が目指している体験を実現するために、必要な要素が適切に用意されているかどうかだと思います。

僕自身、単に長いゲームを作りたいという理由で制作を進めてきたわけではありません。物語やキャラクターを表現していく中で、結果として現在のボリュームになったという感覚があります。

個人制作として考えると、やはり大きな規模

それでは、個人制作という観点から考えるとどうでしょうか。

まず、制作を一人で進める場合、作業の種類が非常に多くなります。シナリオの作成や修正はもちろん、ゲームシステムの構築、画面デザイン、演出、音楽、素材の管理、動作確認など、さまざまな工程に対応する必要があります。

本作の場合、ゲームのシナリオだけでも約23万字という規模があります。

さらに、50話以上のシナリオをゲームとして成立させるためには、文章を用意するだけでなく、それぞれの場面に合わせた立ち絵や背景、音楽、演出などを設定していかなければなりません。

そして、フルボイス化を進めるのであれば、前回までに紹介したように、数千件規模の音声制作や管理も必要になります。

こうした作業を考えると、少なくとも僕自身が個人で制作する作品としては、十分に大規模なものになっていると感じています。

もちろん、個人制作でも数十時間規模の作品を完成させている方はいますし、さらに膨大な制作量を必要とする作品も存在します。

したがって、個人制作の中で特別に大きな作品だと断言することはできませんが、簡単に完成させられる規模ではないことは確かだと思います。

制作期間が長くなった理由も考えてみる

本作は、すでに長い期間をかけて制作を続けています。

制作期間が長くなった理由としては、シナリオの規模が大きいことに加えて、制作の途中で新しい要素を取り入れたり、既存の部分を改善したりしてきたことも関係していると思います。

特に最近は、メッセージウィンドウをはじめとしたUIの見直しや、ゲーム内の演出の改善などにも取り組んでいます。

さらに、フルボイス化についても、作品の完成度を高めるための新しい取り組みとして進めることにしました。

こうして考えると、制作期間が長くなっているのは、単純に作業量が多いからというだけではなく、制作を続ける中で、自分が目指す作品の形も少しずつ変化してきたからなのかもしれません。

もちろん、改善を続けること自体が目的になってしまい、いつまでも完成しないという状況は避けたいところです。

新しいことを取り入れる一方で、完成までに必要な作業を見極め、優先順位をつけて進めていくことが重要だと感じています。

長編作品だからこそ、最後まで楽しめる構成にしたい

想定プレイ時間が10時間を超えるとなれば、プレイヤーが最後まで物語を楽しめるかどうかも大きな課題になります。

例えば、物語の展開に緩急をつけることや、場面ごとの雰囲気を適切に表現することなどは、長編作品では特に重要になると思います。

また、ビジュアルノベルでは、文章を読む時間がプレイ体験の大きな割合を占めています。

そのため、文章の読みやすさだけでなく、メッセージウィンドウの配置や文字の大きさ、キャラクターの表示方法なども、快適さに関わってくるはずです。

最近取り組んでいるUIの改善も、こうした点を意識したものです。

さらに、作品を何日かに分けてプレイすることも考えると、セーブやロード、バックログなどの機能についても、使いやすい状態にしておきたいと思っています。

ゲームのボリュームを増やすことよりも、そのボリュームを最後まで楽しんでもらうための工夫を大切にしていきたいところです。

完成させることが何よりも重要

ここまで作品の規模について考えてきましたが、個人制作において最も重要なのは、やはり完成させることだと思います。

どれだけ多くの要素を取り入れても、完成しなければ、プレイヤーに作品全体を楽しんでもらうことはできません。

もちろん、制作途中の経験そのものにも価値はありますし、これまでに学んできたことや身につけた技術も、僕にとって大切なものです。

それでも、長い時間をかけて制作を続けてきた作品だからこそ、最終的には一本のゲームとして完成させたいと考えています。

最近は、ゲームの基本的な構成がある程度整ってきたこともあり、制作の中心が、新しい要素を一から用意する段階から、既存の部分を改善し、完成度を高めていく段階へと少しずつ移ってきています。

もちろん、まだ不足している素材や、調整が必要な部分も残っています。

ただ、今後は作品全体を見渡しながら、必要な作業を着実に進めていきたいと思います。

おわりに

今回は、『吸血天使のユニット戦線』が個人制作のビジュアルノベルとして、どれくらいの規模になるのかを考えてみました。

想定プレイ時間は約10〜12時間、シナリオは50話以上、文章量は約23万字。さらに、フルボイス化や各種演出なども予定していることを考えると、個人制作としてはかなり多くの作業を必要とする作品になっています。

一方で、ほかのビジュアルノベルと比較してみると、プレイ時間だけで作品の規模や魅力を判断できるわけではないことも改めて感じました。

大切なのは、作品の長さや制作にかけた時間そのものではなく、完成した作品をどれだけ楽しんでもらえるかということなのだと思います。

長い期間をかけて制作してきた本作ですが、少しずつ完成に近づいていることも実感しています。

今後も必要な改善を続けながら、最後まで楽しめる作品を目指して制作を進めていきたいと思います。

それでは、また次回!