徒然社会人大学生ログ 第40回「大学の学びと研究のためにLaTeXを理解する 種類・構造・基本記法の整理」

大学の学びや研究でLaTeXを理解しておきたい

大学で学んでいると、レポート、演習の提出物、研究メモ、発表資料、卒業論文や修士論文など、文章をきちんと整えて書く場面が増えてくる。そうした中で、LaTeX は単なる「見た目をきれいにする道具」ではなく、文書を構造的に扱うための仕組みとして役立つ。

僕自身、LaTeX の良さは、見た目の美しさ以上に、数式、見出し、図表、参照、文献といった要素を、ばらばらではなく一つの文書構造として扱えるところにあると感じている。文章が短いうちは Word のようなワープロでも十分対応できるが、内容が長くなり、修正や再利用が増えてくると、構造を持って管理できることの価値が大きくなってくる。

特に、数式を使う分野や、図表番号・節番号・参考文献を丁寧に扱いたい場面では、LaTeX の強みがはっきり出る。大学の学びや研究において、文書を書く作業が一度きりで終わらず、積み重なっていくものであるなら、LaTeX を理解しておく意味はかなり大きいと思う。

まず整理したいのは「LaTeXそのもの」と周辺要素の違い

LaTeX を触り始めると、pLaTeX、LuaLaTeX、クラス、パッケージといった似たような言葉が一気に出てきて、そこで混乱しやすい。最初のうちは、これらをひとまとめにしてしまいがちだが、ここを分けて考えられるようになると理解がかなり進む。

僕は、LaTeX を次のような層で捉えると分かりやすいと思っている。

  • TeX
    組版処理の土台そのもの。
  • LaTeX
    TeX を文書作成向けに使いやすくした仕組み。
  • エンジン
    実際に処理を行う本体。LuaTeX、pTeX、upTeX などがここに入る。
  • クラス
    文書全体の型。articlereportbookjsarticlejlreq など。
  • パッケージ
    数式、画像、リンク、参考文献など、必要な機能を追加するもの。

この違いが分かると、「どこを変更すれば何が変わるのか」が見えやすくなる。LaTeX が難しく見えるのは、全部が同じ層の話に見えてしまうからであって、仕組みとして切り分けると、意外と整理しやすい。

大学で使うLaTeXとして特に重要なのは日本語環境

英語だけの文書であれば、比較的シンプルに考えやすい。しかし、日本語でレポートや論文を書く場合は、LaTeX の話が少し変わってくる。ここで大事になるのが、日本語をどのように扱うかという環境の問題である。

日本語 LaTeX では、pLaTeX、upLaTeX、LuaLaTeX 系といった選択肢が出てくる。つまり、「LaTeX を使う」というだけでは十分ではなく、どの日本語処理系で、どのクラスを使って文書を作るのかまで考える必要がある。

ここを曖昧にしたまま進めると、最初は何となく動いているように見えても、途中でコンパイルできなくなったり、文字まわりの見た目が崩れたり、配布されたテンプレートがうまく動かなかったりする。書き方の習得以前に、最初の環境選びがその後の使いやすさをかなり左右する。

日本語でこれから始めるならどう考えるか

これから新しく日本語文書を整えていくなら、僕はまず LuaLaTeX + LuaTeX-ja を有力な候補として考える。比較的現代的な構成で、日本語組版を扱ううえでも整理しやすいからだ。新規に自分の環境を作るなら、この方向はかなり扱いやすいと思う。

一方で、大学や研究室から配布されたテンプレート、先輩の過去資料、学会向けの既存テンプレートなどに合わせる必要があるなら、必ずしも新しさだけを優先するべきではない。そうした場面では、upLaTeX や pLaTeX を前提にした環境の方が現実的なことも多い。

結局のところ、大学で実際に LaTeX を使う場面では、「今っぽい構成だからこれが正解」というよりも、「提出先や既存の文書と噛み合うかどうか」の方がずっと重要になる。新しく一から始めるなら LuaLaTeX 系、既存テンプレートに合わせる必要があるなら upLaTeX 系、という整理をしておくと実用的だと思う。

LaTeX文書の基本構造は意外と単純

LaTeX は難しそうに見えるが、文書の基本構造そのものはそこまで複雑ではない。まず \documentclass で文書の型を決め、必要な \usepackage を並べ、\begin{document} から本文を書き始める。たったこれだけで、文書の骨組みはできる。

たとえば、日本語文書の最小例としては次のような形が分かりやすい。

\documentclass[a4paper,11pt]{ltjsarticle}

\usepackage{amsmath,amssymb}
\usepackage{graphicx}
\usepackage{hyperref}

\title{LaTeXの基礎整理}
\author{焼魚あまね}
\date{\today}

\begin{document}

\maketitle

\section{はじめに}
これは本文です。

\subsection{小見出し}
文章を書きます。

\end{document}

ここで大事なのは、見た目を直接調整することよりも先に、「これはタイトル」「これは節」「これは本文」というように、文書の役割を宣言していくことだと思う。LaTeX は、見た目を後から整えるための仕組みというより、構造を先に与えることで文書全体を安定させる仕組みとして理解すると分かりやすい。

学習や研究でよく使う基本記法

大学で LaTeX を使うなら、最初に覚えたいのは、見出し、箇条書き、数式、図、参照あたりである。これだけでも、講義レポートや研究メモの多くは十分に書けるようになる。

数式は LaTeX の代表的な強みで、本文中に入れるなら $ ... $、独立した式として書くなら \[ ... \]equation 環境、複数行をそろえるなら align 環境がよく使われる。

本文中では $a^2+b^2=c^2$ のように書ける。

\[
\sum_{k=1}^{n} k = \frac{n(n+1)}{2}
\]

\begin{align}
f(x) &= x^2 + 1 \\
f'(x) &= 2x
\end{align}

数式を少しでも扱う分野では、この書きやすさはかなり大きい。逆に、数式をほとんど使わない分野であっても、見出しの階層、図表番号、相互参照がきちんと整うだけで、文書の安定感はかなり変わってくる。

最初からすべてを覚えようとしなくてもよい。まずは、見出しを書けること、本文中の数式と独立した数式を書けること、それから簡単な図や参照を扱えること。このあたりを押さえるだけでも、LaTeX を使う意味は十分に感じられるはずだ。

クラスとパッケージの違いを意識すると文書管理がしやすい

LaTeX を使っていると、「余白を変えたい」「図を入れたい」「リンクを有効にしたい」「数式をもっときれいに扱いたい」といった要件が次々に出てくる。ここで重要になるのが、クラスとパッケージを混同しないことだと思う。

クラスは文書全体の設計に関わるもので、articlereportbook のように、短いレポート向けか、章立てのある長文向けかといった文書の性格を決める。日本語文書では jsclassesjlreq などが候補になる。

一方、パッケージは必要な機能を追加するものである。たとえば graphicx は画像、hyperref は PDF 内のリンクや URL、amsmath は数式処理を扱う。つまり、文書の土台はクラスで決め、その上に必要な機能だけをパッケージで積み上げていく、という考え方になる。

LaTeX を使っていて管理しやすいと感じるのは、この積み上げ方が自然だからだ。最初から何でも盛り込むのではなく、文書の目的に応じて必要なものだけを追加していける。この感覚は、講義の提出物にも研究ノートにも共通して役立つと思う。

大学で使うなら参考文献と相互参照の価値が大きい

LaTeX の価値は、見た目以上に「再利用しやすい構造」にあると僕は思う。節番号、図番号、式番号、参考文献番号を手作業で直す必要が減るのは、短い文書ではそれほど大きな利点に見えないかもしれない。けれど、文章が長くなり、何度も修正し、順番を入れ替え、内容を追加していくようになると、そのありがたみがはっきり分かってくる。

特に研究では、文献を読みながらメモを書き、あとでその一部をレポートや論文へ流し込むことも多い。そうしたとき、文書が構造として整っていると、単なる清書ではなく、蓄積された材料を再編していく作業がしやすい。

最初から完璧な文献管理まで目指さなくてもいいと思う。まずは、参照や文献を文書の一部として扱う発想に慣れることが大事で、その先に BibTeX や biblatex のような本格的な管理へ進めばよい。学部段階でも、この感覚を早めに持っておく意味は大きい。

つまずきやすいのは書き方より環境の噛み合わせ

LaTeX 初心者が詰まりやすいのは、本文の書き方そのものより、むしろ環境の噛み合わせの方だと思う。たとえば、あるテンプレートは jsarticle 前提なのに、別の処理系でそのまま動かそうとしてエラーになる、といったことは珍しくない。

これは、LaTeX の知識不足というより、前提条件が見えにくいことが原因で起きる。だからこそ、「どのエンジンを使うのか」「どのクラスを使うのか」「そのテンプレートは何を前提にしているのか」を最初に意識しておくことが大事になる。

また、目次や相互参照、文献などは一回のコンパイルだけでは反映しきれないことがある。こうした点も、最初は「なぜ更新されないのか」と戸惑いやすい。LaTeX は書いた瞬間にすべてが確定するというより、複数の要素が連動して文書を整えていく仕組みなので、その前提を知っておくだけでもかなり気持ちが楽になる。

どんな学生にLaTeXが向いているか

LaTeX は、すべての学生に必須というわけではないと思う。短い感想文や、装飾より内容だけを急いでまとめればよい提出物なら、Word の方が早いことも多いはずだ。

ただ、数式を使う、図表や参照が増える、長い文書を書く、研究メモを再利用する、将来的に卒論や修論につなげたい、といった条件が一つでもあるなら、LaTeX を学ぶ価値は十分にある。最初は少し取っつきにくく見えても、書く文書が増えるほど、その価値ははっきりしてくる。

僕としては、LaTeX は論文専用の特別な道具というより、文書を構造で考えるための道具だと思っている。だからこそ、今すぐ本格的な研究をしていない人でも、大学で学びを積み重ねていくなら、早いうちに触れておく意味がある。

最初の一歩としてのおすすめの考え方

大学の学びや研究のために LaTeX を始めるなら、最初から全部を理解しようとしなくてよい。むしろ、最初の一歩を小さくする方が続きやすい。

まずは、自分が日本語文書をどの環境でコンパイルするのかを決める。新規なら LuaLaTeX + LuaTeX-ja を候補にし、提出先のテンプレートがあるなら、その前提に合わせる。次に、日本語クラスを使った最小文書を一つ作る。そこから、見出し、数式、図、参照の順で必要なものだけを覚えていけばよい。

LaTeX は、始める前には大きな道具に見えるが、実際には少しずつ使い方を広げていける仕組みでもある。大学の学びや研究を支える道具として考えるなら、完璧を目指して構えるより、まずは一つ文書を書いてみることが、いちばん良い入り口になると思う。