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LaTeXは英語の名前だけ見ると覚えにくい
LaTeXを始めると、documentclass、section、subsection、align など、英語の言葉が次々に出てきます。もちろん、そのまま使っているうちに慣れていくこともできますが、入門の段階では、単語の意味を日本語で理解しながら覚える方がずっと入りやすいと僕は思います。
たとえば section は、ただの記号的な名前ではなく、「区切る」「節に分ける」といった意味に近い言葉です。subsection はその下にある小さな区切りです。こうして日本語で意味をつかんでおくと、コマンドの役割も見えやすくなります。
LaTeXは確かに覚えることの多い道具です。ただ、最初から全部を丸暗記する必要はありません。まずは、意味が分かるものから一つずつ使えるようになるだけでも、かなり前に進めます。
まずはLaTeX文書の基本の形を知る
LaTeXの文書は、最初に文書の種類を決めて、本文の始まりと終わりを示し、その間に内容を書いていくという形になっています。たとえば、最小限の文書は次のようになります。
\documentclass[a4paper,11pt]{article}
\title{はじめてのLaTeX}
\author{名前}
\date{\today}
\begin{document}
\maketitle
\section{はじめに}
ここに本文を書きます。
\end{document}
最初に出てくる主な命令を、日本語の意味で整理すると次のようになります。
documentclass は「文書の種類」title は「題名」author は「著者名」date は「日付」begin{document} は「ここから本文開始」end{document} は「ここで本文終了」maketitle は「題名を実際に表示する」section は「節見出し」
こうして見ると、いきなり難しいことをしているわけではなく、文書の部品に名前を付けて組み立てているだけだと分かります。LaTeXの最初の壁は、構文そのものよりも、英語の名前に慣れていないことにあるのかもしれません。
よく使う英語の意味を日本語で押さえる
入門でまず覚えたい命令を、日本語の意味と一緒に見ておくとかなり理解しやすくなります。
section は「節」、大きめの見出しです。subsection は「小節」、section の下の見出しです。subsubsection はさらに細かい見出しです。paragraph は段落見出しです。subparagraph はそれよりさらに細かい段落見出しです。itemize は箇条書きです。enumerate は番号付きの列挙です。emph は強調です。figure は図です。table は表です。caption は図や表の説明文です。label は名前を付けることです。ref は付けた名前を参照することです。
大事なのは、英単語をそのまま暗記することではなく、その命令が何をするためのものなのかを理解することです。役割が分かれば、名前は後から自然に覚えやすくなります。
見出しの階層はどうなっているのか
LaTeXには見出しの階層があります。これを最初に整理しておくと、文書を書き始めたときに混乱しにくくなります。
article クラスでは、基本的に次のような順番になります。
\section{大きな見出し}
\subsection{その下の見出し}
\subsubsection{さらに下の見出し}
\paragraph{段落見出し}
\subparagraph{さらに細かい段落見出し}
つまり、section の下に subsection があり、その下に subsubsection があり、さらに必要なら paragraph や subparagraph まで使えます。
ただ、実際によく使うのは section、subsection、多くても subsubsection くらいまでだと思います。paragraph や subparagraph まで細かく分けると、文書の構造が複雑になりすぎて、かえって読みにくくなることがあります。
たとえばレポートや学習メモなら、次のような構成で十分です。
\section{理論の整理}
\subsection{基本定義}
\subsection{具体例}
\subsection{考察}
必要があれば、その中でさらに細かく分けます。
\section{理論の整理}
\subsection{基本定義}
\subsubsection{定義1}
\subsubsection{定義2}
なお、report や book のようなクラスでは、この上に chapter という「章」が入ります。
\chapter{第1章}
\section{節}
\subsection{小節}
つまり、article は章なし、report や book は章あり、と考えると分かりやすいです。
sectionとsubsectionはどう使い分けるのか
section と subsection の違いは、見た目の大きさというより、話のまとまりの大きさで考えると理解しやすくなります。
section は大きな区切りです。subsection は、その中にある小さな区切りです。
たとえば、「LaTeXの基本」という大きなテーマの中に、「見出し」「数式」「画像」という話題があるなら、それらは section で並べるのが自然です。一方、「数式」という話題の中で、「インライン数式」「別行数式」「複数行数式」と分けるなら、それは subsection にすると整理しやすくなります。
見出しは文字サイズだけで決めるのではなく、内容の階層に合わせて決める。この感覚を持っておくと、文書全体の読みやすさがかなり変わってきます。
エスケープとは何か
LaTeXを始めたばかりの頃、分かりにくい言葉のひとつが「エスケープ」だと思います。僕も最初は、何から逃がすのかよく分からない言葉だと感じました。
LaTeXでいうエスケープは、ざっくり言えば、特別な意味を持つ記号を普通の文字として使えるようにすることです。
LaTeXには、そのまま書くと特別な意味になる記号があります。たとえば % はコメント開始の記号です。
100% 正しい
このようにそのまま書くと、LaTeXは % 以降をコメントだと解釈してしまうことがあります。そこで、次のように書きます。
100\% 正しい
この \ を付けることで、「これは特別な記号としてではなく、文字そのものとして出したい」とLaTeXに伝えているわけです。これがエスケープの基本的な考え方です。
エスケープを日本語で言い換えると分かりやすい
エスケープという言葉が分かりにくければ、入門の段階では、次のように理解するとよいと思います。
「記号の特別な意味をいったん外して、文字として使う」
この方が、ずっと直感的です。
LaTeXではいくつかの記号が特別扱いされます。そのため、それらをそのまま表示したいときには \ を付けます。よく使うものは次の通りです。
\%
\$
\#
\_
\&
\{
\}
たとえば \$ はドル記号そのものを出したいときに使います。$ は本来、数式の開始や終了を表す特別な記号だからです。
また、\_ はアンダーバーそのものを出したいときに使います。_ は本来、数式の下付き文字を指定するための記号だからです。
このように、LaTeXでは「その記号が普通の文字なのか、それとも特別な命令の一部なのか」を意識することが大切になります。
バックスラッシュは何をしているのか
LaTeXでは \section や \begin のように、\ から始まる命令がたくさん出てきます。この \ は、LaTeXに「ここから命令が始まる」と伝えるための記号です。
たとえば、
\section
は、「section という命令を使います」という意味になります。
つまり、\ は二つの場面でよく出てきます。ひとつは \section や \begin のように、命令の始まりを示す場面です。もうひとつは \% や \_ のように、特別な意味を持つ記号を普通の文字として使いたい場面です。
どちらにしても共通しているのは、LaTeXに対して何かしらの指示を出しているということです。この感覚を持っておくと、コードを見たときの理解がかなりしやすくなります。
最初によく使うものを意味付きで覚える
実際に文書を書き始める段階で、まず覚えておくと役立つものを挙げると、次のようになります。
\section{節}
\subsection{小節}
\subsubsection{さらに細かい節}
\begin{itemize}
\item 箇条書き
\end{itemize}
ここで begin は「始める」、end は「終える」、item は「項目」です。
\emph{強調}
emph は emphasis の略で、「強調」という意味です。
\label{sec:intro}
\ref{sec:intro}
label は「名前を付ける」、ref は reference で「参照する」という意味です。
\begin{align}
a &= b + c \\
d &= e + f
\end{align}
align は「そろえる」という意味で、複数の式を見やすく整列させるために使います。
こうした命令は、英語のつづりだけで覚えるよりも、意味と役割を結びつけて理解する方がずっと身につきやすいです。
数式の命令も意味で覚えると楽になる
LaTeXでは数式を書く機会が多いですが、数式の命令も略語や英語の意味が分かると覚えやすくなります。
\frac{a}{b}
frac は fraction で、「分数」です。
\sqrt{x}
sqrt は square root で、「平方根」です。
\sum_{k=1}^{n}
sum は「総和」です。
\alpha
\beta
\gamma
これらはギリシャ文字です。
\begin{align}
...
\end{align}
align は「そろえる」です。
意味が分かるだけで、何のための命令なのかが見えてきます。最初は全部を覚えようとしなくても、実際に必要になった命令から順番に覚えていけば十分です。
入門段階ではどこまで覚えればよいか
LaTeXは奥が深いので、学び始めるといろいろな機能が気になってきます。ただ、最初の段階で必要なのは、そこまで多くありません。
まずは次のあたりが分かれば、かなり実用的に書き始められます。
documentclassbegin{document} と end{document}section と subsectionitemize と enumerateemph
基本的な数式label と ref
エスケープが必要な記号
このあたりを押さえておけば、学習メモ、レポート、簡単な資料は十分に作れます。逆に言えば、最初から複雑な設定や大量のパッケージを覚えようとしなくても大丈夫です。
書籍で学ぶことと、実際に書いて覚えること
LaTeXは、書籍や解説記事で体系的に学ぶことにも意味があります。文書の全体像や正式な書き方、細かなルールは、まとまった説明で学ぶ方が理解しやすいからです。
ただ、それだけだとどうしても抽象的になりやすい面もあります。実際には、何かを書こうとして初めて必要性が分かる命令も多いです。
レポートを書こうとして section を使う。
数式を書こうとして \frac や align を覚える。
記号をそのまま出したくてエスケープを知る。
長い文書を書こうとして label と ref を使う。
このように、書きたいものの中で必要になったものを覚えていく流れは、とても自然です。僕としては、書籍で土台を作りつつ、実際に文書を書きながら身につける。この両方があると、LaTeXはかなり学びやすくなると感じます。
まとめ
LaTeXの入門では、英語の名前だけをそのまま覚えようとすると苦しくなりやすいです。だからこそ、まずは日本語で意味を理解しながら覚えることが役に立ちます。
section は節。subsection は小節。align はそろえる。label は名前を付ける。ref は参照する。
エスケープは、特別な意味を持つ記号を普通の文字として使うこと。
このくらいの理解があるだけでも、LaTeXはかなり触りやすくなります。最初の目標は、全部を覚えることではありません。意味が分かる状態で、一つ文書を書けるようになること。それだけでも十分に大きな一歩です。
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